荻悦子詩集~「流体」 流体 なぜ馬なのか それも白い 疾走する肢体が 薄明のなか 青ざめて見える 濡れた砂に 私が残した旋律 わたしの歌はやがて乾き 砂はうねって丘をつくった だが やさしい稜線 などと なぜ感じるのか 大きく揺れあがる馬の背 背の上に身を低く伏せる娘の身体も 激しく上下する 長い髪が吹き上がって 額を打つ たてがみが渦巻いて 視界いっぱいに広がる 疾走は青ざめたまま弾け しぶきとなって散る 自在な流体 流れ続ける目であるわたしのなかに 彼らがどっと身を跳らせたのだ 荻悦子詩集「流体」より