荻悦子詩集より~「祖父の庭・十二月」

祖父の庭・十二月 納屋の 広い土間の隅 鳥の羽根が 紙の上にこんもりとある 触らないのよ 訝しげに言う母の声を遮って 一本だけ ね つやつやした羽根 赤茶色にさまざまな斑点があって 光の具合で色が変わる きれいな一本だけ… 続きを読む 荻悦子詩集より~「祖父の庭・十二月」

荻悦子詩集より~「燕」

  燕 浮いたとたん 狂ったような速さ 激しく沈み 急に向きを変える ああっ ぶつかってくる 思わず目をつむる人の 頭上すれすれに 数羽 やみくもに飛ぶ 曲がり角 きれいに反れ 生け垣の 繋がった枝葉より低く … 続きを読む 荻悦子詩集より~「燕」

荻悦子詩集より~「終わりの空」

終わりの空 丸い錫の写真立てに 入れておくのは 他人の冬 夢と呼ぶな 幻とも なつかしい なかった聖日 ここではない土地の 雪の降る祝日 椅子に上着を掛けたまま 人はわけもなく人を呼んで なごりの空を眺めに立った 裸木の… 続きを読む 荻悦子詩集より~「終わりの空」

荻悦子詩集から~「ラベンダーが咲く斜面」

ラベンダーが咲く斜面   ラベンダーが咲き 花の色が広がって行く 草地から突き出た岩が いたる所で花を阻もうとするが ラベンダーの花は斜面を埋めて行く 梨の木が曲がり 桃の木が傾き 切り立った岩だけの稜線が こ… 続きを読む 荻悦子詩集から~「ラベンダーが咲く斜面」

荻悦子詩集より~「石塁」

石塁   不揃いな石塁は むかしの人が積んだ 石は日に晒され 草の斜面に くねくねと連なっている わたしは俊敏な獣だった 羊の脇を駆け抜け いつもは石塁をひと飛びで越える 急な斜面を走り 遥か下方の川を目指す … 続きを読む 荻悦子詩集より~「石塁」

荻悦子詩集より~「運河」

運河 キャナールでは 何を話せばいいのか うねらないクラリネットは 膝ほどの水位 右足がもたついて カポックの蔭 女の人たちの名前は忘れてしまった 窓際に沈むにしても 泥の水面 運河の水はほとんど動かず 葉のまばらな木々… 続きを読む 荻悦子詩集より~「運河」

荻悦子詩集より~「荒地のアーモンド」

荒地のアーモンド   明け方 荒れ地を伝って来た風が 木枠の窓を揺すった 光の筋が裂かれ 壁の上で目まぐるしく踊る この風がアーモンドを落とすだろう だが その音は聞こえず 男の歌声をかすかに聞いた 呟くように… 続きを読む 荻悦子詩集より~「荒地のアーモンド」

荻悦子詩集より~「雨の午後のレッスン」

 雨の午後のレッスン 青年の方に首を巡らせ 自分の胸の辺りから 滞った空気を掬いあげるような目つきをして ピアニストが 曲の解釈を述べ立てている その根拠のほとんどは 同じ主題を扱った画家の絵や 言葉で書かれた… 続きを読む 荻悦子詩集より~「雨の午後のレッスン」

荻悦子特集のお知らせ

新宮出身の詩人・荻悦子さんの詩については、これまで折にふれて紹介してきましたが、新宮ネットの読者からもっと知りたい、もっと詩を読みたいとの要望が編集部に届いております。 この度、ご本人の了解を得て、特集を組むことになりま… 続きを読む 荻悦子特集のお知らせ